中学生向けキャリア教育
キャリア教育への想い
キャリア教育で大切なことは、
単に職業を知ることや
進路を選択することだけではなく
自分がどのように社会とかかわり、
どのように生きていくのかを
考える機会を提供すること。
それは、子どもたちが社会の中で
生きていく術を身につけるために、
周囲の大人が行う
すべての働きかけだと考えます。
社会に出るということは、
答えがひとつだけではない
問いに向き合い続けること。
正解が用意されていない中で、
自ら考え、選択し、
その結果を引き受けながら生きていく力
が求められます。
誰かの価値観に従うのではなく、
自分自身の価値観を育み、
「自分らしく生きていく」こと。
そのためには、他者との関わりの中で
自分を見つめ直し、
違いを認め合いながら、
自分を見いだしていく経験が欠かせません。
まなび・咲くキャリアでは、
生徒たちが「自分の道を自分で選ぶ」という
シンプルでありながら
決して容易ではない課題に
向き合えるような働きかけを大切にしています。
その第一歩として、
自分の興味・関心や得意なこと、
感じていることに目を向ける機会をつくり、
「自分とは何か」を
少しずつ捉えていくことを重視しています。
さらに、他者との対話や共有を通して、
新たな気づきを得ることで、
自分の可能性を広げていくことも
ねらいの一つです。
キャリア教育は、
一度の授業で完結するものではなく、
日々の学びや経験の積み重ねの中で
少しずつ育まれていくものです。
だからこそ、大人が意図的に関わり、
子どもたちが安心して考え、迷い、
表現できる場をつくることが重要です。
そして、子どもたちが
「やってみたい」
「一歩踏み出してみよう」
と感じられるような
小さなきっかけを提供し続けることが、
キャリア教育における
大切な役割だと考えています。
このような働きかけを通して、
生徒たち一人ひとりが自分なりの答えを見つけ、
自分の人生を主体的に切り拓いていくことを
願っています。
中学生向けキャリア教育について
なぜ中学生からキャリア教育なのか
私たち大人が子どもだった頃は、
大人になって社会に出ることは、
特別に意識しなくても時期が来れば
自然に訪れるもののように
感じられていました。
進学や就職といった道筋は
ある程度見えており、
その流れに乗ることが
一般的であったように思います。
しかし現在では、
少子化による家族や社会の在り方の変化、
価値観の多様化、
さらには雇用情勢の不安定さなどが影響し、
将来に対する見通しが
持ちにくい状況が広がっています。
選択肢が増えたことは
一方で可能性の広がりでもありますが
その分、
「何を選べばよいのか」
「自分は何をしたいのか」と迷い、
不安を強く感じる若者も
増えているように感じられます。
実際に若者と関わる中で、
「自分が何をしたらよいのかわからない」
「将来のことを考えるのが怖い」
といった声に触れるたびに、
私は思うのです。
もし、もっと早い段階から
社会に出ることや働くことについて、
自分自身と結びつけて
考える機会があったならば、
その不安は少し違った形に
なっていたのではないかと。
中学生の時期は、自分とは何かを考え始め、
自意識が高まる大切な発達段階にあります。
この時期に、自分の興味や関心、
得意なことや苦手なことに目を向け、
他者との違いや共通点に気づく経験は、
将来の選択の土台となっていきます。
また、社会や仕事について知ることを通して、
「自分はどのように生きたいのか」
という問いに
向き合うきっかけを得ることができます。
キャリア教育を中学生段階から行う意義は、
進路選択を早めることではなく、
「自分で考え、選ぶ」という経験を
少しずつ積み重ねていくことにあります。
将来の夢や目標が
明確に定まっていなくても構いません。
むしろ、わからないことをそのままにせず、
「知ろうとする」
「考えてみる」
という姿勢を育てることが重要です。
だからこそ、中学生のうちから
キャリア教育に触れることで、
子どもたちは自分の可能性に気づき、
社会とのつながりを感じながら、
少しずつ自分の将来を描いていくことが
できるのだと考えています。
そしてその積み重ねが、
いずれ自分らしい一歩を踏み出す力に
つながっていくのだと思います。
授業で伝えていること
中学校での授業で、
中学生に必ず話す言葉があります。
「皆さんは、今やるべきことや
課題が決められていますね。
やるかやらないかは自分次第ですが、
親や先生から『やりなさい』と
言われていることがありますよね。
そうです、勉強です。
これは、上の学校へ進んでも、
やはり親や先生からやるべきことや、
課題を与えられます。
どの教科をどのように学ぶのか、
次に何をすべきかという道筋は、
ある程度誰かが決めてくれます。
その中で努力を重ねながら、
学生生活を送っていくことになります。
ところが、
就職活動になると状況は大きく変わります。
それまでとは違い、
急に『はい、自分で考えてやりなさい』
と言われるのです。
自分は何をしたいのか、
どんな仕事に向いているのか、
どんな生き方をしたいのか――
そのすべてを自分で考え、選び、
行動していくことが求められます。
そのときに、
『え?今まで全然考えてこなかった』
となってしまうと、
何をどうしたらよいのかわからず、
身動きが取れなくなってしまうことがあります。
どこから手をつけてよいのかも見えず、
不安ばかりが大きくなってしまう。
これはとてもつらいことですし、
貴重な時間を無駄にしてしまうことにも
つながりかねません。
だからこそ私は、
皆さんの年齢のうちから、
少しでも職業について知ってほしい、
自分の将来について考えるきっかけを
持ってほしいと思って、この場に来ています。」
今のうちから少しずつ、
自分の興味や関心に目を向け、
「自分はどうありたいのか」と問い続けること。
それが、将来「自分で選ぶ」場面に立ったときの
大きな力になります。
私は、そのための小さな種をまく役割を担いたいと考えています。
授業で大切にしていること
自分を知ること。
働く意味を考えること。
社会に出ることを楽しみにすること。
【詳しく読む】
中学生のキャリア教育実施レポート
夢のタネを蒔く、ということ
そんな中で私は、
子どもたちの心に夢のタネを蒔く人で在りたいと
考えています。
心を耕し夢のタネを蒔く…。
それはすぐには芽吹かないかもしれません。
しかし、何年かかっても、
いつか芽を出し、
若葉となり、
花開くことを
信じていたいと思っています。
「大丈夫、ここにいるよ」という存在でありたい
「すべては、明日一歩を踏み出すためのエネルギーとなるように」
今すぐじゃなくてもいい。
すぐに答えが出なくてもいい。
少し立ち止まって、
自分の中を見つめてみる時間があってもいいんです。
そしてその中で、
「ちょっとだけ前に踏み出してみようかな…」
そんな気持ちが生まれること。
さらに、
「もう少し進んでみようかな…」
そう思える瞬間が積み重なっていくこと。
私は、そのように一歩一歩進んでいけるような
関わり方を大切にしたいと考えています。
子どもが歩けるようになり、
徐々に外の世界に興味を持ち始める頃の様子を
思い浮かべることがあります。
お母さんのそばを少し離れては振り返り、
不安そうに確かめる。
そのときに、「大丈夫だよ、ちゃんとここにいるよ」と、
にこにこと見守られることで、
子どもは安心してまた一歩進んでいきます。
やがて、その距離は少しずつ広がり、
自分の力で歩いていけるようになっていきます。
キャリア教育における関わりも、
どこかそれに似ているのではないかと思います。
無理に背中を押すのではなく
しかし放っておくのでもなく
「見ているよ」
「大丈夫だよ」
というメッセージを伝えながら、
安心して一歩を踏み出せる環境をつくること。
その中で、自分で考え、
自分で選ぶ力が少しずつ育っていくのだと思います。
現代は、なにかと「自己責任」という言葉が
強調される時代です。
自分で考えて、自分で努力して、
自分で行動して、そして結果も自分で引き受ける
――確かにその力は必要です。
しかし、その言葉だけが一人歩きすると、
どこか冷たく、孤独な印象も感じられます。
でも、本当にそういう世界の中でだけ
人は育っていくのでしょうか。
私たちはこれまで、
まわりの人に見守られ、支えられ、
時には導かれながら
育ってきたのではないでしょうか。
だからこそ、子どもたちが
これから自分で歩いていく力を
身につけていくためにも、
「一人でやりなさい」
と突き放すのではなく
必要なときには寄り添い
考えるきっかけを与え
安心して挑戦できる土台を
つくることが大切なのだと思います。
すべては、明日一歩を踏み出すためのエネルギーとなるように。
その小さな一歩が、
やがて大きな前進につながっていくこと信じて、
これからも関わり続けていきたいと思っています。




